化粧品の安全性
化粧品は肌に使うものですが、口紅やリップグロスなどは知らず知らずのうちに口に入ってしまいます。また赤ちゃんに使うものは、うっかりしていると赤ちゃんが口に入れてしまいますね。
化粧品が食べても安全かどうかは、とても気になります。一般的に化粧品に使われる成分は、安全性が確認されたものです。化粧品成分の安全性とは、単回投与(急性毒性)、反復投与(慢性毒性)、一次刺激性、連続刺激性、光毒性、眼粘膜刺激性、アレルギー性、光感作性、変異原性などを指標に判断されます。
残念ながら全ての成分がこれらの項目を試験しているわけではありませんが、一般的に使用されている成分は基本的に試験をパスしています。
口に入れても大丈夫かどうかは急性毒性や慢性毒性によって確かめられていますので、ほとんどの成分は少量が口に入っても大丈夫です。1)食べられるもの(食用にできる)、2)食べても大丈夫だが食用に適さないもの、3)食べてはいけないもの、の3通りに分類したとすると、化粧品に使われる成分は2)食べても大丈夫だが食用に適さないものが多いように思います。
ただし、毒性はなくてもお腹を壊したり吐き気がしたりする場合もありますので、ご注意ください。なお赤ちゃんは身体が小さいですし、感受性も大人とは異なりますので十分に注意してあげてください。
食べられるもので作った化粧品は安全か?
それなら食べられるもので化粧品を作れば安心だ、と思う方も多いかと思います。私も化粧品の仕事を始めたばかりの頃は、食べられるもので化粧品を作りたいと思っていました。しかし化粧品のことや皮膚のことを知れば知るほど、それは間違いだと気付きました。
唐辛子や辛子、わさびなどの刺激物は食べられますが、皮膚に付けると大変なことになります。レモンやグレープフルーツなどの柑橘系は食べても大丈夫ですが、フロクマリンという光毒性を持った成分が含まれているので、皮膚に塗ると日光に反応して紅斑や炎症などを引き起こします(化粧品に用いられるものはフロクマリンを除去しています)。
パイナップルやメロンなどの美味しい果実には、プロテアーゼというたんぱく質を分解する酵素が豊富に含まれています。この酵素は洗顔料にも配合されており、皮膚のたんぱく質汚れを分解してくれますが、長時間皮膚と接触しているとピリピリと刺激になります。
このように食べられるからと言って、皮膚に付けても安全だということにはなりません。食べて安全ということと皮膚に付けて安全ということとは全く別の次元なのです。
想像以上にデリケートな皮膚
皮膚は皆さんが想像している以上にデリケートです。ある意味、消化器官よりもデリケートだと言って良いと思います。皮膚は消化・吸収する器官ではありません。むしろ異物が外部から侵入しないようにバリアを形成しています。
また異物が侵入してしまった場合には、一早く対応するための免疫センサーが張り巡らされています。微量の異物にも反応してしまうことがあるので、化粧品に用いる成分には高い純度と安全性が求められています。
そのため化粧品に用いられる成分は、ほとんどのものが食品用のものに比べても精製度が高く、厳しい規格となっています。私たち化粧品開発者は化粧品の処方を組む時、基本的には化粧品規格の成分を選びますが、どうしてもその成分に化粧品規格のものがなかった時だけ仕方なく食品規格のものを使用することがあります。
しかし使いたい成分に化粧品規格と食品規格の両方があるなら、高価ですが化粧品規格のものを選びます。その方が精製度や純度が高く、皮膚に対して安全性が高いものが多いからです。
化粧品には、口や皮膚から体内に入った時の安全性と皮膚に塗った時の安全性とが求められます。
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